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【2024年5月】コンテナ運賃は高止まりの見通し!紅海を経由しないコンテナ輸送が定着

5月 12, 2024

2024年5月に入ってコンテナ運賃が安定化してきました。しかし、今後は徐々に値上がりしていく可能性が高いです。
主な原因は、紅海の代替航路(アフリカの喜望峰経由)が当たり前になりつつあり、消費する燃料と輸送日数が増えるからです。
2023年末から武装組織フーシ派による商船への攻撃によって、スエズ運河から紅海を経由する航路の安全が脅かされ「紅海危機(Red Sea crisis)」が世界的に注目されました。
コンテナ輸送は影響が大きく、一時はコンテナ運賃が40フィートコンテナあたり4,000ドル近くに急騰しました。
海運会社は、アフリカの喜望峰を経由するルートに航路を変更し、一部は航空貨物に切り替えて輸送しており、その後はコンテナ運賃は下落して現在は安定化してきています。
この記事では、安定化してきた運賃とコンテナ輸送の現状について、以下の内容をわかりやすく紹介します。

  • 現在のコンテナ運賃の推移
  • マースクが紅海に影響を受けない航路を強化
  • 定時到着遵守率が改善
  • スリランカの港でコンテナ量が48%増

コンテナ運賃が安定化したとはいえ、以前よりも高い運賃を払いながら、輸送に時間がかかる状態です。
しかも、中東情勢、特にイスラエルとイランとの関係によって状況が急変する可能性があり、予断を許さない状況といえるでしょう。

コンテナ運賃の推移:WCIとSCFIの両指標が安定化

まず、コンテナ運賃の推移をWCIとSCFIの2つの指標から紹介します。

  • ドリューリー社のWCI(世界コンテナ指数)は微増
  • 上海コンテナ貨物指数(SCFI)も安定傾向

それぞれ詳しく見ていきましょう。

ドリューリー社のWCI(世界コンテナ指数)は微増

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画像引用:World Container Index| drewry

5月2日時点で、ドリューリー社のWCI(World Container Index:世界コンテナ指数)は、40フィートコンテナあたり2,725ドルとなり、1%の微増と発表されました。
前週の4月25日が2,706ドルであり、18日が2,719ドルであったため、コンテナ運賃は安定化したと言えます。
とはいうものの、前年同週と比較すると55%も運賃は高くなっているそうです。

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画像引用:World Container Index| drewry

次に、主要路線別のスポット運賃を個別に見ても、それぞれ数パーセントの微増と微減となって、小幅な変動にとどまっています。
したがって、紅海を迂回するコンテナ輸送が常態化し、2023年よりも割高な運賃のまま安定化したといえるでしょう。
当然ながら、高止まりした輸送費は貨物に転嫁されるため、原材料費などの値上がりとなり、商品価格の上昇圧力となるため、間接的なインフレの要因といえるかもしれません。

SCFI(上海コンテナ貨物指数)も安定傾向

上海の主要航路の平均運賃を示す指標SCFI(上海コンテナ貨物指数)は、ドリューリー社のWCIとほぼ同じような値動きをしています。
4月26日時点で、SCFIは1,940ドル/TEU(TEU:20フィートコンテナ1個分に換算した単位)でした。
1月19日には2,239ドルであったのが下落して、一時は1,730ドルまで下がった後に、やや上昇傾向に転じています。

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画像引用:SCFI运价指数 | Shanghai Shipping Exchange

しかし、画像のように一度は価格が底値を付けて反転しているため、現在は安定しているといえるでしょう。
もちろん、前年同月と比べると999ドル/TEU前後であったため、安定化した水準は2倍近い価格になっています。
したがって、運賃が安定化したといっても割高な金額で維持されており、2023年に比べて荷物を2倍の料金で運ばないといけない状況です。

マースクは紅海に影響を受けない航路の強化を発表

海運会社の中でも、デンマークの海運会社Maersk(マースク)は、安全が確保できない紅海を避けて、迂回路でのサービス強化を行っています。
4月19日、Maerskは、紅海を迂回してインドと北欧間をつなぐME2サービスの強化を発表しました。
この発表では、インドと北欧を繋ぐ「ME2 Westbound」のルートに船2隻を追加投入し、インドのムンバイから北欧までの輸送日数を5〜7日短縮する計画となっています。

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画像引用:ME2 Westbound | IMEA | Maersk

画像のようにME2サービスの航路は紅海を使わないルートであり、迂回路が通常航路になりつつあるといえるのではないでしょうか。
このサービス強化により、インドの製造業者や輸出業者は北欧市場へのアクセスが迅速になります。
同様に、北欧からインドへ自動車を輸入している企業も、自動車部品の輸送日数が短縮されるというメリットを受けられます。
以上のことから、Maerskはアフリカ大陸を経由する航路のサービスを強化して、紅海を使わない輸送体制の構築をしているといえるでしょう。

遅延傾向だった定時到着遵守率が改善に向かう

アフリカの喜望峰経由の迂回航路が安定化してきているかどうかは、予定通りに船が港に到着する割合を計算した定時到着遵守率(Schedule reliability)で判断が可能です。
4月30日、コンテナ輸送のデータ分析会社Sea‑Intelligence(シー・インテリジェンス)がGLPレポート(グローバル・ライナー・パフォーマンス)を発表しました。
このレポートによれば、主要な海運会社の定時到着遵守率が改善されていると報告しています。
2024年3月の数字では、前月比1.6ポイントに上昇して54.6%となったそうです。
同社が掲載している各社の遵守率は以下のとおりです。

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画像引用:Sea-Intelligence – Impact of Red Sea crisis on schedule reliability reverting

改善したとはいえ、定時到着遵守率は紅海危機が起きる前の水準まで回復したわけではありません。
前年同月比では、2024年3月はマイナス7.9%であり、去年はほとんどの海運会社が55%を超えていました。
今回のレポートでは、Wan Hai(ワンハイ)社の定時到着遵守率が59.7%と最も高く、次はHapag-Lloyd(ハパックロイド)社とZIM(ジム)社が56.1%です。
そのため、遵守率は上がっているものの全体としては遅延傾向が続いているといえるでしょう。
しかし、迂回して輸送する航路が安定して、遵守率が上がっていくと喜望峰経由が通常航路になる可能性が高まります。

航路の変化でスリランカの港でコンテナ量が48%増加

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画像引用:https://twitter.com/Maersk/status/1398897004856721412

迂回ルートで大量の貨物が運ばれるため、以前とは異なる港にコンテナが集まり、スリランカの港が活況を呈しています。
5月2日、SLPA(スリランカ港湾局)は、2024年第1四半期のコンテナ取扱量が前年同期比で48%増という記録的な伸びを記録したと報告しました。
具体的な数値では、44万1,032TEUから65万2,766TEUに増加し、コロンボ港での積み替え貨物量が大きく数値を伸ばしたとされています。
SLPAは、このコンテナ量の急増には紅海危機と、それらの影響によるものであると見解を発表しています。
4月には、Maersk社のMaersk Edmonton(マースク・エドモントン)号が初めてコロンボ港の東コンテナターミナルに寄港しました。
SLPA(スリランカ港湾局)は、コロンボ港、ゴール港、トリンコマリー港などの開発や運営、港湾サービスの提供を行っており、中東向けの重要な積み替え港となる体制が整っていると強調しています。
今後も紅海を迂回するルートが主要航路になっていくと、スリランカの港の重要性が高まり、重要なハブ港としてポジションを確立する可能性があります。
ただし、これらは紅海を利用できないことによる悪影響の1つであり、輸送時間の延長や消費される燃料増加により、確実に輸送費が高くなっていくでしょう。
そのため、同じ貨物を以前よりも高い輸送費で、時間がかかるという状態になっています。

コンテナ運賃が安定したものの再度高騰する気配あり

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紅海危機によって急騰したコンテナ運賃が安定化しつつあります。
一時は、サプライチェーンが途絶するのではないかと危惧されましたが、紅海を迂回するルートへの切り替えや、航空輸送への移行が進んでいます。
しかし、2024年5月現在では、これらの代替の輸送方法が一時的ではなく、常態化しているといえるでしょう。
その結果、消費される燃料や輸送にかかる日数が増えており、運賃が高止まりしている状態です。
また、今後は輸送期間の延長で必要なコンテナ量が増えるため、空のコンテナが不足する事態が考えられます。

そして、紅海危機が起きた原因であるイスラエルによるガザ地区侵攻の状況によっては、再度運賃が急騰するでしょう。
フーシ派による攻撃も規模や範囲が大きくなっており、4月26日にはアメリカ中央軍がパナマ船籍のタンカーが損傷したと発表しています。
したがって、2024年5月現在のコンテナ運賃は、見通しが効かない状態でありながら、増える燃料や保険料によって徐々に値上がりしていく可能性が高いです。

■参考サイト

ヤマシタコンテナサービス

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