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海上コンテナも次世代型に移行|スイス企業AELERはスマートコンテナ「Unit One」を披露

5月 30, 2023

海上コンテナも次世代型に移行|スイス企業AELERはスマートコンテナ「Unit One」を披露海運業界では、GHG(温室効果ガス)の排出削減のため、重油に代わるエタノールやアンモニアを燃料にする船舶の調達が急がれています。
その一方で、海上輸送に使うコンテナも従来の鉄製ではなく、次世代モデルに入れ替わりつつあるようです。

スイスのAELER(エーラー)社は、複合素材とIoT技術を採用した次世代の海上コンテナ「Unit One(ユニット・ワン)」を開発。導入に向けて各種イベントでUnit Oneを公開しています。

Unit Oneは複合構造で強度を高めつつ、積載量アップと軽量化を実現。また、複合構造によって断熱効果もあるため、冷凍や冷蔵貨物を輸送する際に使用されるリーファーコンテナでなくとも、温度管理が必要な荷物の運搬が可能です。

今までのドライコンテナと使い勝手は変わらず、港湾施設などで使用されている機器との互換性も確保されています。
AELER社は、すでにポルトガルやシンガポールなどの複数の顧客にUnit Oneを供給しており、他の市場にも参入を予定しているそうです。

船会社と顧客の両方にメリットがある次世代海上コンテナUnit One

AELER社の「Unit One」のようにセンサーを搭載したコンテナはスマートコンテナと呼ばれ、船会社だけでなく顧客にも大きなメリットを提供します。
分かりやすくするため、この章ではUnit Oneのメリットをそれぞれ分けて説明します。

  • 顧客のメリット
  • 船会社のメリット

それぞれ確認していきましょう。

1. 顧客のメリット

顧客にとってUnit Oneは、従来のコンテナよりも安い運賃で、荷物を安全に目的地まで輸送でき、その過程を把握できるメリットがあります。

前述したように、Unit Oneは複合構造を有しており断熱効果があるため、化学品や食品、飲料など温度調整が必要な貨物をドライコンテナで輸送できます。
ドライコンテナより運賃が高いリーファーコンテナを使わずに運べるため、運送コストの削減が可能です。特に医療品の輸送において重宝されるでしょう。

また、コンテナ自体に湿度や圧力、ドアの開閉などを検知するセンサーが搭載されており、AELER社が提供しているプラットフォームから中身の状態を把握できます。
つまり、従来のコンテナよりも荷物の盗難や破損のリスクを下げる効果が期待できるでしょう。

2. 船会社のメリット

Unit Oneは従来の20フィートコンテナより軽量化と積載量が高められているため、船会社にとっては輸送量を維持しつつ、船に積載するコンテナ数を減らせます。
そのため、コンテナの個数が減らせることで、海上輸送で排出されるCO2を20%軽減できると推定されています。
Unit Oneをトラック輸送に用いた場合は、必要燃料は4%削減できるそうです。

また、センサーが搭載されているため、顧客に貨物のリアルタイム情報の提供や、従来のドライコンテナより差別化したサービスを提供できるため、船会社の収益性の向上につながります。

動画引用:AELER Container Presentation – YouTube

複合素材で作られた次世代海上コンテナUnit Oneの特徴

AELER社のUnit Oneのサイズは、従来の20フィート・ドライコンテナと同じです。
同社のWebサイトでは、最大積載量は27,980kgとなっており、湿度や圧力、ドアの開閉などを検知するセンサーを搭載しています。

これらのセンサーが検知した情報は、AELER社のオンラインプラットフォーム「Control Tower」から確認が可能です。
そのため、顧客や船会社はコンテナの現在位置や温度、湿度、衝撃、ドアの開閉などが簡単にチェックできます。
予想到着時間に変更が必要な時や、コンテナ内の温度・湿度などが想定条件を超えた場合、アラートを発して事前対応もできる仕様です。

Unit Onの寿命は、標準的なコンテナと同等で10 ~ 15 年ほどとされています。また、従来の鉄製のコンテナのように錆びる心配もありません。

2023年5月現在、Unit Oneの種類は20フィートコンテナのみですが、40フィート、45フィートのコンテナモデルも開発しているそうです。

導入が進むスマートコンテナ

2023年3月、インドネシアの海運企業Meratus(メラタス)は、センサーを搭載したスマートコンテナ「SMARCO-Smart Container(スマルコ・スマート・コンテナ)」を発表しました。
SMARCO-Smart Containerは、高度なセンサーとクラウドベースを活用し、効率的かつ安全なコンテナ輸送を実現します。主にセキュリティに重点が置かれており、コンテナの不正開封の検出や盗難や不法密輸を防止できる仕様です。

搭載されたデバイスはソーラーパネルバッテリーの充電機能があるため、電源の確保などが必要なく、バッテリー寿命は最大10年とされています。
また、センサーには以下の機能が備わっているそうです。

  • リアルタイム位置情報
  • 温度検知
  • 衝撃検知
  • 重量予測
  • データログ

得られたデータの暗号化も装備されており、これらの情報を顧客はスマホアプリでいつでも把握できるため、問題が起きても迅速な対処が可能です。

以上のことからMeratus社は、従来より高いレベルの海上コンテナ輸送の安全性と効率性を顧客に提供できます。

動画引用:Our new features for Meratus Online App – YouTube

2026年には世界のコンテナの25%はスマートコンテナ

2022年6月、イギリスの海運コンサルタント企業Drewry(ドゥルーリー)は、スマートコンテナは5年間で8倍に増加すると市場を分析しています。
Drewryの分析の要点は以下のとおり。

  • 普及率0.3%のスマートコンテナが25%に増加
  • スマートコンテナ導入後の海運事情

今後、スマートコンテナの導入によって、海運輸送の運賃やサービス面での競争が激化するかもしれません。
それぞれ解説します。

普及率0.3%のスマートコンテナが25%に増加

Drewry社の分析によれば、世界のコンテナの3.6%はすでにデバイスが搭載されたモデルだそうです。
ただし、導入されているのは温度管理が必要なリーファーコンテナなど種類によって異なり、海運のドライコンテナでのデバイス搭載のモデルの普及は遅れているとしています。

しかし、今後はドライコンテナにもデバイスを搭載したスマートコンテナが加速的に普及し、2026年までに世界のコンテナの25%に相当すると予測しています。
導入当初は高価であっても、技術革新によりデバイスのコストが下がるため、普及が加速するそうです。

出典: Drewry’s Container Census & Leasing Annual Review & Forecast 2022/23

すでにスマートコンテナの導入を発表した企業もあります。
2022年4月、ドイツの海上コンテナ運送企業のHapag-Lloydは、自社の300万TEUすべてのドライコンテナをスマートデバイス装備のモデルに入れ替えると発表しました。
他の海運企業も競争力維持のために追随するでしょう。

スマートコンテナ導入後の海運事情

前述したようにスマートコンテナは、海運業者だけでなく顧客にもメリットを提供できます。

スマートデバイスを装備した各コンテナは、リアルタイムでデータ送信でき、サプライチェーンの透明性と効率性が向上。GPSの位置データや温度、コンテナへの衝撃も監視できるようになります。

そのため、海運でのサプライチェーン情報をより制御しやすくなり、運送中のデータを用いた貨物の予測分析ツールなどが提供されるようになるでしょう。

したがって、以前では把握が難しかったコンテナ内部の状態や港の到着時間などを海運業者が顧客に提供することで、長期の契約を結ぶことも可能になるとDrewry社は分析しています。

船舶に限らずコンテナも次世代のスマートコンテナに

今後、海運業界では新素材を使用した次世代コンテナや、センサーを装備したスマートコンテナが普及していくでしょう。センサーにより温度や位置情報、ドアの開閉などを把握できるため、他社とは異なる海運サービスを提供できるようになります。

スイスのAELER社は、スマートコンテナ「Unit One」の導入に向けて動き出しています。Unit Oneは、従来の鉄製の20フィートのドライコンテナよりも積載量があり、軽量化を実現しました。
そのため、コンテナ船に積載する際には、今までの荷物量のままでコンテナ数を削減。推定では、海上輸送で排出されるCO2を20%軽減できるとされています。

このようなスマートコンテナが2026年までに世界全体で25%を占めると分析もされています。
今後、数年間で船と同様に海運コンテナも入れ替えが頻発するかもしれません。

◆参考サイト(公式サイトやメーカーサイト):
AELER | The Smart Container As A Service
https://www.aeler.com/

Meratus
https://www.meratus.com/

Smart container fleet to expand 8-fold over the next 5 years|Drewry
https://www.drewry.co.uk/maritime-research-opinion-browser/maritime-research-opinions/smart-container-fleet-to-expand-8-fold-over-the-next-5-years

■参考サイト(メディアやブログ記事):
AELER launches new sustainable smart container
https://www.porttechnology.org/news/aeler-launches-new-sustainable-smart-container/

Aeler smart composite containers enter Portuguese market | CompositesWorld
https://www.compositesworld.com/news/aeler-smart-composite-containers-enter-portuguese-market

Aeler fiberglass shipping containers enhance transport insulation payload visibility | CompositesWorld
https://www.compositesworld.com/news/aeler-fiberglass-shipping-containers-enhance-transport-insulation-payload-visibility

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