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コンテナ海上輸送の運賃が上昇する原因について

2月 1, 2021

海上輸送の運賃が上昇

コンテナ海上輸送の運賃は複数の原因によって、上下しています。

以下は日本から北米西岸向けの40FTコンテナの海上輸送運賃を2014年~2020年11月までの推移をグラフにしたものです。

コンテナの運賃上昇グラフ
参照:日本→北米西岸の海上運賃推移(40FTコンテナ) – 統計出典:公益財団法人 日本海事センターHP

2014年から徐々に海上輸送運賃は下がり、2016年頃から2019年末までは$2,000で推移しています。

しかし、2019年末に$1,500まで下落し、その後は急上昇しています。

この記事では海上輸送運賃の上昇がなぜ発生するのか、一般的な原因と2020年末に発生した急上昇の原因について、解説します。

運賃の変動要素

海上運賃は通常の物価変動と同じく、需要と供給のバランスによって変化します。

  • 運賃上昇= 需要 > 供給
  • 運賃下降= 需要 < 供給

需要による変動要素は、世界経済の長期的な変動と、クリスマスシーズンやアメリカの感謝祭に備えた大量輸入などの季節性の変動があります。

供給による変動要素は、大きく以下の観点があります。

  • 港湾の取扱能力
  • 船腹の供給量
  • コンテナの供給量

 

要素1:港湾の取扱能力

港湾の取扱能力の変化は地域限定ではありますが、運賃に影響を与えます。

例えば、ロサンゼルス(Los Angeles)では年間約1000万TEUのコンテナを扱っています。月間平均では80万TEUとなりますが、運賃が急上昇している2020年9月以降は90万TEUを超えており、限界に近づいています。

港湾の取扱能力が超える懸念がある場合、海運会社は輸送貨物の引き受けに消極的になります。荷揚げやコンテナの返却に時間がかかることによるロスなどを考慮し、海運会社は赤字にならないように運賃を上げ始めますので、徐々に運賃が値上がりします。

他にも大雪で作業効率が落ちる、COVID-19のような感染症によって作業員が集まらない、ストライキが発生することなどが原因で、取扱量(供給)自体が減少することで運賃が上昇することもあります。

 

要素2:船腹の供給量

海運業界では船のお腹と書いて、船腹(せんぷく)という呼び方をします。お腹とは、貨物庫のことで、「船腹が不足」とは「船の輸送能力が不足」と読み替えることが出来ます。

船は需要が増えたからといって、簡単に増やすことができないという特徴を持っています。

船の建造は資金調達まで考慮すると数年がかりであり、建造する場所も限られています。好景気が続いているケースでは建造開始が5年後ということもあります。

想定よりも需要が増えた場合には長期的な船腹不足が発生し、運賃が上昇します。

然しながら、コンテナの輸送需要は20年間右肩上がりで増え続けているため、コンテナ船の建造が欧州、中国の海運会社を中心に続けられているため、供給過多の状態が続いています。

要素3:コンテナの供給量

必要なコンテナ数に対して、用意できるコンテナが少ない場合にも運賃が上昇します。

コンテナ自体は輸送会社が用意することが多いため、少ないコンテナに対して顧客(荷主)が殺到することになり、より高い運賃を支払う顧客に対して、優先的にコンテナを割り当てることになります。

コンテナの供給については、以下の記事で解説していますのでご参照ください。

 

局所的な運賃上昇が世界に波及する原因

「コンテナの供給量」の不足による運賃上昇は、序盤では特定の地域のみで発生します。

例えば、上海でコンテナが不足し、上海発の運賃が上昇した場合、運賃上昇を見込んでコンテナを上海に集めようとする動きが働きます。

すると、周辺地域(アジア)でコンテナの不足感が発生し、他の地域でもジワジワと運賃が上昇します。

コンテナを使用している会社はコンテナ不足に対応するため、リース(借り受け)を増やすことで対応を始めます。

通常であれば、リース会社が需給のバランス調整役を担い、コンテナ不足による価格上昇は地域レベルの影響で抑えられます。

然しながら、COVID-19(新型コロナウイルス)で発生した需要増大と輸入地での荷役能力不足には耐えきれず、世界的な運賃上昇を招くこととなりました。

コンテナ不足とリース会社の関係については、以下の記事で詳細を解説していますのでご参照ください。

 

主要(長距離)航路と短距離航路の運賃格差による影響

「港湾の取扱能力」「船腹の供給量」「コンテナの供給量」が原因による運賃上昇は、主要航路で発生するケースが大半です。主要航路とは、東アジア(上海、横浜)⇒北米西岸といった長距離で、尚且つ輸送量が大きい航路のことです。

主要航路は国家経済を担っていると言っても過言ではなく、コンテナ輸送が途絶えると輸入地の物価にまで影響ことがあり、荷主は優先して自社の貨物を輸送してもらうため、高い運賃を払いやすいという構造があり、運賃が驚くほど早く上昇することがあります。

例えば、COVID-19(新型コロナウイルス)の影響によって、コンテナ不足が発生した際には、主要航路(横浜から北米西岸)と短距離航路(横浜からタイ)で以下のような運賃格差が発生しています。

航路間運賃格差

参照:航路間の運賃格差2020年11月 – 統計出典:公益財団法人 日本海事センターHP

 

横浜から北米西岸までのトランジットタイム(TT、輸送期間)は約24日です。

横浜からタイまでのトランジットタイム(TT、輸送期間)は約13日です。

単純に日数で計算すると、「横浜から北米西岸」までの航路のほうが運賃が高いことが分かります。

実際の輸送コストには日数以外も関係するため、単純な比較は難しいですが、このケースでは「横浜から北米西岸」の航路の方が、収益性が良いことは明らかです。

この時期は運賃の上昇に合わせるようにコンテナが主要航路にかき集められ、東アジアの域内航路において、コンテナが危機的なレベルで不足するという事象が発生しました。

 

コンテナ海上輸送の運賃が上昇する原因についてのまとめ

この記事ではコンテナ海上輸送の運賃上昇原因を解説いたしました。

コンテナによる物流ネットワークは世界中に張り巡らされているため、一つの現象、地域での減少が世界的な影響を及ぼす原因の一端がご理解いただけたのではないでしょうか。

2020年後半から発生しているCOVID-19(新型コロナウイルス)による影響は、過去に類を見ない大規模なもののため、収束には時間を要するかもしれません。

輸送運賃が高止まりしている主要(長距離)航路の影響が収まれば、東アジア全域の物流懸念も収まってくるかと思いますが、まだまだ先が見えない状況です。

今後も輸送運賃、コンテナ価格の変化には注意が必要な状況です。

以上「コンテナ海上輸送の運賃が上昇する原因について」でした。

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